岩渕貞太 × KENTARO!! × 高橋萌登  スペシャルトーク!

KENTARO!! 今日、僕は進行メインで務めさせて頂きます。まず貞太君に今日の通し稽古を見ての感想等お聞きしたいです。

 

岩渕 今日元々ソロの話をしようというのがあったじゃないですか。ソロをやっている人はいっぱい居て、ただソロって一体なんだろうとそれをちゃんと考えて作るって割と難しいというかちゃんとやるってなんだろう…みたいな事があったりして。自分もソロで表現する事が多いからソロダンサーであるという思いがあって。ソロを見る時、舞台上で二人以上いれば向き合う事ができるけど一人で何を対象として踊るのかっていつも自分でも考えてて。他の人はどうしてるのかなとたまに思って。

今日は見ていて幾つか言葉がポンポンポンって浮かんできたんだけど、何か萌登さんは移動の達人みたいな感じがした。どこかに行こうとする、場所がどんどん前に進んでくような。もちろん舞台上で動いているんだけど、それだけじゃなくてそこでステップを踏んでるというのがどっかに行くためのステップだったり、そうすると景色が見えてきたりして…不思議でした。自分は具体的に人や空間とか考えるけど萌登さんは自分自身が動いている、そういうもので空間と踊っていて面白かったです。自分とは全然違うんだなと思った。僕は踊る時にステップ踏まないし作る時にステップとはなんぞやというのがないんですよね。でもそういう風に踊るっていうのはやっぱりその人にとってのどんな意味があるのかっていうのは凄く興味深かったですね。

 

K!! 例えば、見た時にその意味があるのかどうかをその瞬間に考えますか?

彼女がダンスをしている時にその動き自体に意味があるのか…でも、もしここで興味がなかったら何かあるんだろうなとは思ってもそれについて深く考えないっていう事もあると思うんですけど。でもそこに好奇心はある?

 

岩渕 うん、あるし、わりと早い段階で今日は僕なりに見るフックがかかって良かった。まだ全然できてはいないんだろうけど作品をどう自分が見たいかとかどういう風な感じで見るかみたいなフックは早く引っかかってそこからもうずっと色んな事を考えながら見てた。

そんなに作品をKENTARO!!くんのも萌登さんのも沢山見てるわけじゃないけど、何個か作品を見たり踊る姿を見たり、去年横山さんのカンパニーの作品を見て、やっぱり個々に全然違うんだなと思って。もちろんすごく大雑把に言うとKENTARO!!くんのカンパニーメンバーだから似てる所はあるかもしれないけど、違うなと思いましたね。さっきの移動の話を含め。だからそれはすごく面白かった。

 

K!! それを受けて萌登さんはどうですか?

 

高橋 そのここの場所でとか一つの設定でここが部屋とかそういうのではなくて結構時間が流れてるという面ではそう見えたなら良かったなと思いました。

 

K!! それは意図的にやってること?

 

高橋 意図的ですね。でも移動の事についてはあまり意識した事はないので初めて言われました。

 

岩渕 僕も今までいろんな作品を見てる中でもそういう風に感じるダンスっていうのはそんなになかったかもしれない。また今日は素で見るっていうのもあって天井も高かったりいろいろ抜けがあるから違う部分もあるのかもしれないけど、ステップを踏んでても何かに向かってずっと進んでる感覚で見れるものというのはあんまり今までなかったなと思った。

 

K!! それは今回の見所の一つではありますか?

 

岩渕 うん、僕は今日そう感じました。

高橋 私からの質問なのですが、私は作品を作る時に割と振付をするのですけど、貞太さんの場合は振付もあるとは思うのですがそれよりも何か違うものを大事にしてる感じもあって、作品をどこから作り出すのでしょうか?

 

岩渕 そうですね、萌登さんは振付を主体に作るんですよね?

 

高橋 はい、全部即興というのは無理なので自由な所は残しつつ大体振りをつけます。その方がクオリティーも高くなるし自分に自信が持てるので。

 

岩渕 踊り込みとか含めて?

 

高橋 そうですね。

 

岩渕 僕も踊り込まない訳じゃないけど、僕の場合は踊りの形の順番とかを決めるのができなかったんだよね、作った時に。初めは振付ってそういうものだと思ってたからやろうとしたんだけど結果的にできないので。音に合わせられない。

 

K!! それって構成ではなくただ振りを作る行為自体ですか?

 

岩渕 そうそう、この次に右手左手を前とか歩くとか順番を決めるというのができなくて、やったら全然面白く見られない。自分も、あっ、これはやばいなみたいな。だから、ある状態やルールを決めて形はその場でいいやみたいな、ある程度どのくらいの時間かけるかとか、どこからどこまでとステージングを決める事もあるし、そういう枠組みは少し決める事が多い部分とフリーに近くなってくる部分というのはグラデーションがあるんだけど、逆に言うと振付や形の流れを考えてく振付というのは与えられればできるけど。逆に萌登さんは音楽とのシンクロ性が高いなと。

 

K!! そこが割と良かったという所ですか?

 

岩渕 うん、だから音楽があって振付を作るってこうだよねって思ったっていう。笑

 

K!! それは創作において必然性があるという事ですね。

 

高橋 今回の作品では自分で作った曲も使っていて、私も以前は自分で曲が作れなかったので既成の曲を使っていたのですが、プロの人からしたらしょぼいかもしれないですけど自分で作るようになってやっと自分の音楽や作品になった感じがしています。やっぱり既成の曲だとどうしてもクオリティーが高いのでそこに負けちゃう時もあって。

 

岩渕 音楽だけで完成してるみたいな?

 

高橋 そうです、良い曲過ぎたりすると良い曲なのに残念みたいな。皆が知ってるような名曲だと余計に、見ている人の思い入れやイメージがある前提でそれを悪い意味で壊してしまったり、好きだった曲が嫌いになったり。あとは音楽の雰囲気に負けてるような気がする時もあります。私はKENTARO!!さんが全てオリジナルでやってるのを見てて作るようになったというのもあるのですけど、まだまだ音楽の使い方というのは難しいなと思います。曲のバランスとか、逆にない方が良かったりなどもありますし、無音の強さみたいなものもあるので。

K!! これ二人に聞きたいのですが、ソロのやる意味とか意義はどこにありますか?

 

岩渕 うーん、すごい大雑把に言い方になるけど自分は凄くソロが好きなんですよ。お客さんと私しかいない状況にすごく興奮するというか、駆け引きがそこでしか起きない感覚。もちろん照明とか音響との駆け引きもあるんだけど、ソロでしか起こり得ない空間や時間って独特なものがある。自分が何もしなければ何も起きない感じとか。あともしかしたら、ある程度ですけど室伏鴻さんの影響もあるかもしれない。それにソロで1時間作るっていうのは相当面白い作業だなと思う。萌登さん前回やったのはいつですか?

 

高橋 単独で長編は3年半ぶりで今回2回目なんですけど、その間に短編のは幾つかやっていました。ソロはカンパニーで普段他の人もいる中で踊ってるのとはやっぱり全然違くて、ソロは全部自分の責任じゃないですか。私はそんなにソロ活動を頻繁にやってるわけじゃないのに言うのもなんですけど、ゾーンに入る時があるんです。お客さんが集中してるというかなんか掴んでるなってわかる時があって、その時はやっぱり楽しいなと思います。だけど本当に突き放されてる時もわかるので、それで例えばコンテストとかコンペに出た時には、あーそうだろうなっていう結果になります。けど無関心が一番キツイです。まだまだ難しいですね、百発百中にできないのが。

 

K!! やっぱり空気に引っ張られるの?

 

高橋 うーん、最後まで一応集中してやりますけど気にはなりますね。持っていけなかったなって終わった後に思う事の方が多いですけど。

 

K!! お二人は期間で言うと構想抜きで基本どのくらいで作るんですか?

 

岩渕 僕は2、3ヶ月ですね。

 

高橋 私は今回は2ヶ月ですかね。

 

岩渕 結構もうアイディアがあったんですか?

 

高橋 今回はフライヤーや衣装とかざっくりしたイメージはあったんですけど、大体コンセプトが作っていてどんどん固まってく感じなんですけど夜寝る前とか自転車乗ってる時に考えてて、ハッて閃く時が多いので最初からもうこれだっていうのはあまりないかもしれないです。

 

岩渕 今日見てて、これお客さんがイメージしちゃいけないかもだけど、割と夢っぽいというか。別にキラキラ意味ではなくて、ファンタジーっていうカタカナの感じでもなく、ある意味幻想の状態みたいな。筋通ってるなぁってタイトルとかフライヤーとかと。狭めた意味でなく、無意識も含めて筋通ってると思ったんですよね。だから萌登さんの色や核があるんだなって思った。

 

高橋 3年半前に作った「まどろみのしろ」は夢がテーマで、それからもずっと夢というのには興味があるというかずっと近くにあるもので、今回はそれをメインテーマにしてるわけではないですがやっぱり夢に対しての思いが近くにあるのかもしれないです。

 

岩渕 でもそれが重要っていうか、そういうのが一個あるとずっと作れるじゃない。

 

 

K!! 貞太君は沢山本読まれてると思うのですが、作家に例えるなら誰を思い浮かべますか?

 

岩渕 うーん、難しいですね…今まで女性の作家ってほとんど読んで来なかったんだけど最近読むのが楽しくて、石牟礼道子さんや森崎和江さんとか読んでて、ちょっと無理やりな言い方になっちゃうけど少し似てる所があるかもしれない。それは女性だからっていう大雑把な事だけじゃなくて。

石牟礼さんの作品に、水俣病の人のこと書いて「苦海浄土」という作品があって、聞き書って言って、取材に行ってその人が話してるように書くんだけどその人はちゃんと喋れてなかったりそんなこと言ってなかったりする。それはその人の中で起きてて話してる事を聞き取って書いてるので、嘘っちゃ嘘だけど本当なんだ、みたいな事を読んでる人やご本人も思ってるかもしれない。そういう実際に起きたかは別にして、それを奥から引っ張り出して本当のものしてるというか、もしかしたらそっちの方が本当かもって思うような…喋ったことが全部本当なのではなくてその中で起きてる事を読み取った事が本当なのかもしれないなというような感覚が萌登さんからしますね。

 

K!! じゃあその嘘か本当かっていう曖昧な部分みたいなものが夢っぽいものに繋がってたりしますね。

 

高橋 確かにそのノンフィクションとフィクションの間をやりたいという思いがあって、リアルに私だっていうのだけじゃなくて、自然と違う人にも見えてきたりそう思わせられるという事はやりたいことの一つです。

 

岩渕 なんか風景とか背景みたいなものを連れて踊ってる感じ。さっきの移動してるっていうのはまさにそういう事かもしれない。

 

K!! じゃあ物理的な事だけじゃなくて、そういうのも移動というカテゴリーに入るという事ですか?

 

岩渕 そうですね。

 

高橋 それすごく嬉しいです。観ていて勝手に観ている側が妄想できると言いますか風景が見える作品や表現者が好きなのでそう見えたなら良かったです。

 

岩渕 なんかそういうのって教えてもらえないから貴重ですよ。

 

高橋 狙ってやろうとしてもやれないですからね。そう言って頂きありがたいです。

 

岩渕 そうだね、自分の中にそういうものが何かあるからかもしれないですね。

 

高橋 さっきの話に戻ってしまいますけど、ソロの良さってその人の背負ってきたものや人間性がそれが本当の姿や事実ではなくても見えるというのが面白いなと思います。それぞれの人の奥の方が一瞬でも滲み出た時にグッと来ますね。群舞だとなかなかそこは見えないことが多いので。

 

岩渕 見る方もソロだからその人がなんなのかってやっぱり見ようとするし見たいと思うしね。

 

K!!  最後に今回特に観てほしい部分などあれば教えて下さい。 

 

高橋 今回はダンスと向き合ったり並走したり自分が今までやってきたこと感じてきたものを背負って作っていて、今の私の踊りというのはこうだ!というのをダンスの面では提示したいです。あとは正解はないので色々妄想しながら楽しんで頂けたら幸いです。

それとお楽しみポイントの一つ、今回はモモンガ・コンプレックスのメンバーでもある臼井梨恵さんに衣装をお願いしていて、2人で色々意見を交わしたものをデザインして頂いたこだわりの詰まった衣装なので、間近でじっくりそれが感じられると思います。

こまばアゴラ劇場はとにかく客席との距離が近いので毎回毎回出会う人達とその時間を共有し共存をしてるような気持ちで楽しみたいと思います。

 

一同 ありがとうございました!

////トークゲスト////

岩渕貞太 振付家・ダンサー

玉川大学で演劇を専攻、平行して、日本舞踊と舞踏も学ぶ。ダンサーとして、ニブロール・伊藤キム・山田うん等の作品に参加。

2007年より2015年まで、故・室伏鴻の舞踏公演に出演、今日に及ぶ深い影響を受ける。

2005年より、「身体の構造」「空間や音楽と身体の相互作用」に着目した作品を創りはじめる。

2010年から、大谷能生や蓮沼執太などの音楽家と共に、身体と音楽の関係性をめぐ共同作業を公演。

2012年、横浜ダンスコレクションEX2012にて、『Hetero』(共同振付:関かおり)が在日フランス大使館賞受賞。

自身のメソッドとして、舞踏や武術をベースに日本人の身体と感性を生かし、生物学・脳科学等からインスパイアされた表現方法論「網状身体」開発。

急な坂スタジオ・レジデントアーティスト。2018年度・公益財団法人セゾン文化財団シニア・フェロー。

 

《今後の予定》

【オーディション】

岩渕貞太振付作品『曙光』出演女性ダンサー募集(2019年1月24~27日本番)

5月26・27日 応募締切5月21日

会場:急な坂スタジオ

詳細 岩渕貞太 身体地図HP

http://teita-iwabuchi.com

 

【次回公演】

『残光/曙光』振付・出演 2019年1月24~27日 @BUoY 

 

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KENTARO!! 〈東京ELECTROCK STAIRS〉

http://www.kentarock.com/

 

《今後の予定》

Sound theater Vlll 6月2日〜3日 @兵庫県立芸術文化センター